特別インタビュー 〜高野耕太郎氏

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特別インタビュー〜高野耕太郎氏

「JPAL紀伊國屋展2016 in NEW YORK」を開催した
紀伊國屋書店ニューヨーク本店ストアマネジャー・高野耕太郎氏に、
作品展のこと、日本の文化のこと、アメリカ人の印象などをうかがった。

日本のコンテンツであるSASHI-Eには
大きな可能性があると実感しました。

―JPAL紀伊國屋展2016 in NEW YORKの評判はいかがでしたか?

私がまず、驚いたのは上田信先生のサイン会です。会期中の7月20日に1階で行ったのですが、前もって告知していないにも関わらず、機動戦士ガンダムのガンプラのボックスアートの画家だということを知ると、50ドル以上もする上田先生の本を購入し、私も私もという雰囲気で大変大勢の人がサイン会に殺到したのです。機動戦士ガンダムはアメリカでも有名で人気があるコンテンツの一つなのですが、予想以上の反響でした。
作品展「SASHI-E」に関しては、作品に見入って関心を示す人も多かったですね。ギャラリーでの絵の販売は、ニューヨークの文化でもあるので、ある種、ニューヨークらしい企画といえます。実際に購入までにはいたりませんでしたが、SASHI-Eを購入したいという人も見られ、一歩踏み出したのではないでしょうか。
昔は日本といえば、富士山、着物、和食といった決まった日本のイメージがありました。もちろんそれも、日本の誇りですが、現在は「クールジャパン」に代表されるアニメ、コミック、コスプレなどが日本発として人気を呼んでいます。
日本のものとしてSASHI-Eを発信することは重要だと思いますが、日本発だけで勝負をするのは難しい時代になったということがいえるでしょう。だからこそ、SASHI-Eの可能性は大きなものがあると思います。私はそれを肌で感じましたね。

―紀伊國屋書店ニューヨーク本店の役割は?

当書店がニューヨークに開店したのは1981年、ロックフェラーセンター内のこと。2007年、現在のブライアントパーク前に移転してきました。
アメリカでの日本の書店の役割は3つあると思います。1つめは、アメリカで暮らされている日本人に安心できる場所を提供すること。日本語の旅行書や文庫、漫画、単行本がある日本の書店だということです。2つめは、日本文化の中継基地になること。日本人だけでなくアメリカ人に対し日本文化のコンテンツを発信することです。例えば、茶の湯や名刀など日本の文化や日本の名所を英語で解説した本を提供します。3つめは、ニューヨーク・マンハッタンに集まる世界各国、多様なバックグラウンドの人々に本を提供すること。これは通常の英文書やギフトアイテムなどです。これを時代によってバランスよく保っていくことだと考えています。_dsc4362

―こちらの書店で人気の日本のものはどのようなものでしょうか?

クールジャパンに代表されるアニメ、コミックが人気となっています。当店は2階がアニメやコミック関係の売場になっていますが、日本のコミックは、アメリカでは「マンガ」で通じます。逆に「コミックは、アメリカンコミックのことを指しているのです。
当店では基本的にコミックの返品をお受けしていないのですが、先日、「マンガ」はコミックではないので返品したいと言うアメリカの人がいらっしゃいまして、「ああ、アメリカでは日本のコミックはマンガで通っているのだ」と改めて思いましたね。
現在は日本の漫画が次々と英訳されている状況で、なかでも、『NARUTO -ナルト-』(英訳)が大変な人気です。
2階にはスタジオジブリコーナーがあり、ジブリ関連のぬいぐるみや画集、ジグソーパズルなどのグッズを提供しています。そのなかで、千と千尋の神隠しのキャラクターやトトロなどのグッズが伸びています。
また、日本の「カワイイ」という単語はそのままアメリカで通じるのです。「カワイイ」には小さくて精密なというイメージがあり、小さいグッズ、例えば、小さなフィギュアの「コップのフチ子や寿司の上に乗ったネコのキャラクター「ネコずし」などが好評です。
日本のオニギリレシピやキャラ弁ならぬキャラ料理、あみもの、手作り雑貨などの実用書(英訳)もよく動いています。_dsc4377

―アメリカと日本の文化の違いはいかがですか?

ニューヨークはもっともアメリカらしくない都市と言われているところで、本当に多種多様な人々が集まっています。変なことをしても違和感がないといった場所です。
印象的だったのは「私はこう思うということをすごく自然に主張すること。例えば、「会社の方針としてこの商材を展開します」と伝えるとします。すると、賛成する人がいるなか、「私は売れるとは思わない」「私はやりたくない」という反対の発言が、決心して訴えるという深刻な雰囲気ではなく、気軽に出てくるのです。その意見を真摯に聞きながら話し合いをしていくことになります。多様な意見があることはいいことで、私にとって嫌なことではないのですが、日本ではたぶんありえないことなので、おもしろい文化の違いだなと思ったのです。

―ニューヨーク本店は今後どのような方向に進まれていくのでしょうか?

多チャンネル化時代に入り、出版業界は様々な業界との競争が強いられています。マンハッタンではアメリカの大規模な書店が減少し、結果、当店はマンハッタンの最大級の英文書店という認識が広がってきています。これまでは紀伊國屋といえば、和書がある日本の書店という印象でしたが、英文書も充実したグローバル書店として知られてきています。
目の前にあるブライアント・パークは、ミッドタウンの憩いの公園で、側にはニューヨーク公立図書館があります。詩の朗読会など文化的な発信にも力を入れています。当店はそのような文化的なイベントに参加するほか、ニューヨークタイムズなどメディアの取材も増えています。
日本のコンテンツをアメリカで楽しんでもらうという柱はしっかり持ちながら、グローバル書店としても幅を広げていきたいと思っています。_dsc4330

撮影/タカオカ邦彦  取材・文/浅原孝子

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